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しょうせつ えんちょう

小説 圓朝

正岡 容

線上閱讀正岡 容《小説 圓朝(しょうせつ えんちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 163,270 字 · 325 頁

青空文庫

「ハイすみません。サ、あとは台所へいってと、そう、豆絞りの手拭だ」

自身、台所から取ってきて、

「じゃちょいといってきます阿母さん」

もうそのまんま土間へ下り立っていた。

「大丈夫かえお前ほんとにそんな装で」

まだ心配そうに阿母は眉を寄せた。

「細工は流々仕上げをごろうじろ、とんだ『大工調べ』だが、大丈夫ですよ、これでもし一、浅草の寄席からお銭のとどくのが遅れてもいまいって演る一席ですぐお宝が頂けますから」

安心しておいでなさいとばかりピューッと圓朝は飛びだしていった、大晦日の夕日舂く茅町の通りのほうへ。

「ヘイ圓朝、年忘れのお見舞いにうかがいました。誰方も佳い年をお取り下さいやし」

その羽子板ギューッと豆絞りの手拭で額のまん中へ結びつけて、さながら出入りの大工左官がお見舞いにきたようなかっこうをして圓朝は、汚い印袢纏のまんま颯爽と萬八の大広間へと飛び込んでいった。

「……」

はや紅白梅活けた大花瓶まん中に、お供え祝った床の間ちかく、芸者幇間を侍らしてドデンとおさまっていた三十八、九のでっぷり立派やかな金太郎武蔵の主人はじめ、通人らしいその朋輩たちは、いずれも奇抜なこの圓朝のいでたちにアッと目を奪われてしまった。