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こさかいふぼくしスケッチ

小酒井不木氏スケッチ

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《小酒井不木氏スケッチ(こさかいふぼくしスケッチ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,809 字 · 12 頁

青空文庫

ひとつ窓でもあけましょう」

しかし私は遠慮する。「いえ、暑くはなさそうです」その癖充分発汗している。で話が継続する。と氏は復もや云う。

「暑いようです、開けましょう」

「暑いものですか、寒いくらいです」発汗しながら復遠慮! で、話が継続する。と氏は黙って立ち上がり、手早くガタンと窓を開ける。氷柱のような一本の風が、窓を通して吹き込んで来る。私の汗は引っ込むが、氏はそんな場合咳をされる。

物を書くということが、現在の氏には興味らしい。その興味の趣くままに、ペンを執り文を綴るらしい。歌い乍ら物を書く、斯う云ってもひどく間違ってはいまい。やがて夫れが形を変え、憤り乍ら物を書く、この境地に達した時、氏の態度も作風も、一変するだろうと想われる。

「不断の摂生」ということが、氏の肉体養生法であるが、文芸の士としての氏の態度も、これにピッタリ当て篏まっている。如何にもむらが無く秩序正しい。そうして人との接待面にも、夫れがハッキリ窺われる。不愉快な近代の芸術家型たる、お天気師の態度が無いのである。

休火山と云うものは恐ろしい。何時か必ず爆発するぞ、こういう約束を持ち乍ら、静まり返っているからである。