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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《山の人生(やまのじんせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 頁

青空文庫

または隠し婆さんに連れて行かれるといって、小児を戒める親がまだ多い。村をあるいていて夏の夕方などに、児を喚ぶ女の金切声をよく聴くのは、夕飯以外に一つにはこの畏怖もあったのだ。だから小学校で試みに尋ねてみても分るが、薄暮に外におりまたは隠れんぼをすることが何故に好くないか、小児はまだその理由を知っている。福知山附近では晩に暗くなってからかくれんぼをすると、隠し神さんに隠されるというそうだが、それを他の多くの地方では狸狐といい、または隠し婆さんなどともいうのである。隠し婆は古くは子取尼などともいって、実際京都の町にもあったことが、『園太暦』の文和二年三月二十六日の条に出ている。取上げ婆の子取りとはちがって、これは小児を盗んで殺すのを職業にしていたのである。なんの為にということは記してないが、近世に入ってからは血取とも油取とも名づけて、罪なき童児の血や油を、何かの用途に供するかのごとく想像し、近くは南京皿の染附に使うというがごとき、いわゆる纐纈城式の風説が繰り返された。そうしてまだ全然の無根というところまで、突き留められてはいないのである。

しかし少なくともこの世評の大部分が、一種の伝統的不安であり、従って話であることは時過ぎて始めてわかった。