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やまのかみさつじん

山の神殺人

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《山の神殺人(やまのかみさつじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,014 字 · 21 頁

青空文庫

「誰だい? 酔ッ払いだね」

「警察の者だ。ちょッと訊きたいことがある」

「警察? フン、誰だい、酔ッ払って」

「戸を開けろ。山田不二男のことで訊きたいことがある」

にわかに小野が大音声でキッパリ云うと、屋内の女はあわてた。戸があいた。

「なんだい。小野さんか。なんの用さ?」

三十三四の女。後家のヒサというカツギ屋である。ちょッと渋皮のむけた女。なにかと噂のたえない人物である。

「不二男が来てるだろう」

「来てませんよ」

「フン。誰とねてた? 奥の男は誰だい?」

「誰も来てやしないよ」

「ほんとか。上ッて見るぞ」

「ええ、どうぞ。あんまり人を侮辱しないで下さいよ。近所隣りがあることだから」

「御近所は、もう慣れッこだ」小野はいきなりズカズカ上りこんだ。ガラリとフスマをあけると、奥は一部屋しかないから逃げ場もない。フトンの中の男がもっくり起き上って、観念の様子。

「ヤ。鈴木か。鈴木小助クン、意外な対面。カカアに云いつけてやるぞ」

小野は小助を見下してニヤリと笑った。この町のカツギ屋の大将格のオヤジである。

「悪いことをした覚えはないよ。とッとと行っとくれ」

「ウン。よいことをしただけだな」