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いけぶくろのみせ
山之口貘詩文集
山之口 貘
線上閱讀山之口 貘《山之口貘詩文集(いけぶくろのみせ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 頁
それは、こちらの小蒸汽に曳かせるためだった。
やがて、大森沖を過ぎ、羽田沖である。直ぐ右手の沖合いには、灯台がひとつ立っていてまばたきした。左手の方には、別の曳船が七隻。そのむこうには十隻。こちらのは都合四隻。まるで点線のように、三行のダルマが同じ方向へいそいそと急いでいる。
丁度ここの辺り、大正十一年の十月頃だかに、暴風に逢った七隻のダルマ一行が、小蒸汽もろとも海底にもぐってしまったという。それは横浜から東京への曳船だったとのこと。実際、こうして見たところ、こんな風に荷物の積み具合いからして、そもそもと言いたいかんじなのである。載せる物は鉄屑に限らず、無理でも居候でも何でも載っけさせて置いて、もぐるまでは押し黙っていそうな、ダルマの表情はまったく特別なのだ。
僕は、六さんに替わって舵棒を握った。小蒸汽の速力に全身の力をひったぐられて、流石に舵は重い。
普通、曳船の小蒸汽は、三十馬力ときいていたのであるが、いま水神丸一党を引っ張っている小蒸汽は、八十馬力。両側の曳船を抜いて先頭を走っている。
灯台を右へ曲り、羽田沖を過ぎ、多摩川の下流六郷川の沖を過ぎた頃、真正面には、鶴見の工場地帯が待ち受けている。