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ぎゅうじん

山月記・李陵 他九篇

中島 敦

線上閱讀中島 敦《山月記・李陵 他九篇(ぎゅうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,608 字 · 84 頁

青空文庫

巨大な榕樹が二本、頭上を蔽い、その枝といわず幹といわず、蔦葛の類が一面にぶらさがっている。

蜥蜴が時々石垣の蔭から出て来ては、私の様子を窺う。ゴトリと足許の石が動いたのでギョッとすると、その蔭から、甲羅のさしわたし一尺位の大蟹が匍い出した。私の存在に気が付くと、大急ぎで榕樹の根本の洞穴に逃げ入った。

近くの・名も判らない・低い木に、燕の倍ぐらいある真黒な鳥がとまって、茱萸のような紫色の果を啄んでいる。私を見ても逃げようとしない。葉洩陽が石垣の上に点々と落ちて、四辺は恐ろしく静かである。

私のその日の日記を見ると、こう書いてある。「忽ち鳥の奇声を聞く。再び闃として声無し。熱帯の白昼、却つて妖気あり。佇立久しうして覚えず肌に粟を生ず。その故を知らず」云々。

船に帰ってから聞いた所によると、クサイの人間は鼠を喰うということである。

※(ローマ数字2、1-13-22)

ヤルート

とろりと白い脂を流したような朝凪の海の彼方、水平線上に一本の線が横たわる。これがヤルート環礁の最初の瞥見である。

やがて、船が近づくにつれて、帯と見えた一線の上に、まず椰子樹が、次いで家々や倉庫などが見分けられて来る。