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やまもとゆうぞうしのきょうち
山本有三氏の境地
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《山本有三氏の境地(やまもとゆうぞうしのきょうち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,155 字 · 32 頁
第一の出産に加えて第二の出産の必然を、常識の中にはっきりと据えて見せたのである。
この作品は、少くとも同じ作者によって書かれた従前の諸作のうちでは、この作者の主要なテーマ、何をなすべきかが積極的に答えられている点でも傑出したものであることに疑いない。
ところで、私は読者とともにもう一度この作品の中へもぐって行って見たいと思う。そして、心に印された一つ二つの質問について考えて見たい。山本有三氏に向って、赤にさえならなければという親心を客観的に批判し観察していないことを云々することは、無理であろう。そういう思想を時代の圧力として、いずれかといえばリベラルな立場を持っていた父親公荘を、通俗に中途であっさり病死させている作者の手法のかげに、この作の中途で警視庁に呼びつけられたりした作者の語られない苦衷があるのかもしれない。私たちは読者として、そういう諸点については今日好意ある節度を守るのであるが、山本氏として、この作者の立て前とする範囲内で、而も、允子の棲んでいる世間並のいいこと、わるいことの評価と、允男の行動に対する歴史的な意味についての無理解とが、世俗的な分離のまま一分も深められていないのはどういうものであろう。