輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

くずれるおにかげ

崩れる鬼影

海野 十三

線上閱讀海野 十三《崩れる鬼影(くずれるおにかげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 34,100 字 · 69 頁

青空文庫

「呀ッ!」

と私は口の中で呟きました。たしかに耳に聞えました。気のせいにしては、あまりに鮮かすぎます。

誰か来て下さい――といっているようにも思われる救いを求める声が、間もなく続いて聞えて来ます。魂ぎるような悲鳴です。月明の谿々に、響きわたるさまは、何というか、いと物すさまじい其の場の光景でした。私の足は、もう云うことをきかなくなって、棒のように地上に突き立ったまま、一歩も進みません。細かい震えが全身を襲って、止めようとしても止りません。

「誰か呼んでいるぜ」兄は立ち止ると、両掌を耳のうしろに帆のようにかって、首をグルグル聴音機のように廻しています。

「兄さん、兄さん」

「おおッ、こっちだ」兄はハッと形を改めて私の手を握りました。「たしかにあの家らしい。民ちゃん、さあ行ってみよう」

そういうなり兄の荘六は、私の手をひいたままひた走りに走り出しました。私も仕方なしに走りました。白い山道に、もつれ合った怪しい影が踊ります。二人の影です。

満月の夜だったことをハッキリと後悔しました。せめて月が無ければ、こんなにまで荒涼たる風光に戦慄することはなかったでしょう。