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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁
お高は、かなしくなった。決心はしたものの、こうして面と向かうと何といって切り出したらいいか、わからなかった。
従妹だと磯五がいったと、おせい様に聞かされても、お高は、すぐそれを打ち消すことができなかった。黙っていた。
おせい様は、いつものとおり、にこにこしていた。おせい様のまわりには、しばし春の風が吹いている感じがするのだ。いまその春の風がお高のほうへも吹いてきて、お高は、この人に、そんな残酷なことなど、とてもいえそうもないという気がしていた。
おせい様は、お高は遊びに来たのだとでも思っているらしく、よもやまの世間ばなしをはじめた。屈託のない、ほがらかな声だ。お高は、床の間にかかっている、小さな、古い軸を見ていた。それは、わらびの絵で、上に、読みにくい字で、賛が書いてあった。野火の煙や横に、とあとはよく読めなかった。
お高は、それを読もうとして、床の間のほうをのぞくようにした。おせい様も、何か話しかけていたことばを切って、そっちをふり返った。それがお高に、さがしていた機会をあたえた。お高は、いい出していた。
「あの、さっきの小さな女中さんは、わたくしが何のことで参りましたか、あなた様へ取り次ぎましたでございましょうか」