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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

龍造寺主計が、東海道から江戸へはいったのは、この、お民が、おせい様の家から、そそくさと帰ったころだった。

龍造寺主計は、どこの産ともわからない、諸国放浪の浪人だ。年のころは、三十五、六であろう。中肉中背のからだを、風雨と汗でよごれた旅装束につつんでいるのだ。ばかに長い刀をさしているせいか、武骨で豪放に見えるのだが、人物も、武骨で豪放なのだろう。精悍な相貌をしている。顔ぜんたい、大あばただ。

品川まで来ると、八ツ山下の、ちょっと海の見えるところに、掛け茶屋が出ているから、龍造寺主計は、そのまえに立ちどまって、

「おい」

「いらっしゃいまし。おかけなさいまし」

「そうしてはおられん。つかぬことをきくようだが、江戸で人をさがすのに、何かよい工夫はないかな。だれか顔の広い人物があったら、教示にあずかりたい」

仇人

一

吉田屋のお民が、お駒を、お目見得泥棒とののしって、席をけたてるようにしてかえっていったあとだ。磯五は、うつ伏しているお駒の背に手をかけて、おせい様にいった。

「ひとまず、これをつれて帰って、また参ります」

おせい様は、お民のことばで、磯五が感情を害しているに相違ないと、それをおそれているのだ。