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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

ちっともわかりませんよ。決して手を引きませんから、そのおつもりでいてくださいよ」

叫ぶようにいったお高だ。それには、泣き声のようなものがまじっていた。色のないくちびるを歯がかんで歯のあとがついているのだ。

お高は、蒼い顔をして、たち上がっていた。

「お前さまのようなお人、もうもう顔を見るのもいやでございます。せいぜいおせい様なり、あの急ごしらえの妹さんのお駒とかいう女なり、そのほか何人何十人の女でも、手腕いっぱいにおだましなすったがおよろしゅうございましょう。女をおつくりあそばすのは、殿方の御器量と申すことでございますからねえ。ほんとに、磯屋五兵衛さまは、見上げたお腕前でいらっしゃいますよ。ごめんくださいまし」

お高は、ちょっと裳をからげて、草を分けて歩き出した。白い足に、狐いろに霜枯れのした草の葉がじゃれついて、やるまいとするようにからんだ。本堂の屋根を、筑波颪がおどり越えてきた。周囲の老松と老杉のむれが、ごうごうと喚声をあげた。うす陽のかげがふるえた。冴えかえる寒気だ。

磯五は、衣かけの松のその衣かけの枝に、うしろざまに両肘をあずけてもたれかかったまま、立ち去ってゆくお高を見ていた。