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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

ふたりは黙ったまま、ながいこと顔を合わせて、すわっていた。

若松屋惣七と、龍造寺主計と、二人の友情はこのときから燃え上がったのだ。深海をも、影ふかい谷をも、ふたりで歩き貫くことになった。ひとりのためには、そこに、死が待っていたのだ。女のまことが、赤く咲いてもいたのだ。

おせい様の金のほうは、ひとまず片づいたのだろう。ひと月ほどして、東海道掛川宿の龍造寺主計から、急飛脚が、金剛寺坂の若松屋へ駈けこんだ。おおいに見込みがあると思うから、思いきり金を入れる、安心していいという文面だ。若松屋惣七は、もうすっかりそんな商人らしいことをいう龍造寺主計に、遠くから微笑を送った。

五

龍造寺主計が掛川へ発足する前の晩であった。お高は、若松屋の屋敷内の自分の部屋で、縫い物をしていた。何だか、妙にむしむしする日であった。それが、妙にむしむしする晩にかわろうとしていた。お高は縁の障子をあけ放して、そこからくる夕ぐれの光で、針をうごかしていた。金剛寺の鐘がかすかに空気をゆり動かして、きこえてきていた。金剛寺坂をさわいでゆく、子供たちの声もしていた。

お高は、かるい頭痛をおぼえていた。