輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁
「茶を、もらおう」
「はい」
お高は、切り炉へ向かって斜にすわって、ふくさを帯にはさんだ。湯加減をみて、ナツメを取りあげた。薄茶をたてようというのだ。
「もういらぬ」
惣七がいった。
「は!」
お高は、顔を上げた。不可解の色が、お高の貌をあどけなく見せている。そのせっかくの美しさが、よく惣七に見えないのが、惜しかった。
惣七は、いらいらした。
「茶は、いりませぬ」
「はい」
「急な手紙を思い出したのだ。また代筆を頼みたい」
「はい」
お高は、茶道具を片づけて、手早く硯箱を持って来た。巻き紙をのべて、筆の先を小さくかんだ。くちびるに墨がつく。二、三度、硯に穂さきをならして筆を構えた。
しんとなった。上水をへだてた大御番組の長屋から、多勢の笑い声が聞こえて来て、すぐにやんだ。若松屋惣七は、荒れた広庭へ、うつろに近い眼を向けて、黙っている。出の文句を考えているのだろう。お高も、つくり物のように身うごき一つしないで、待っているのだ。
若松屋惣七は、はっきり見えない眼を返して、お高を見た。見ようと努力して、顔を前へ突き出した。
薪のような感じの、不思議な顔である。血の気というものがすこしもなく、すっかり枯れて見えるのだ。