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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

三

お高は、雑司ヶ谷の雑賀屋の寮へ帰って来ていた。そのお高を見舞いに、若松屋惣七と、紙魚亭主人と歌子とが江戸から遊びに来ているのだ。

いつか、この一行に、大久保の奥様という人を加えて、片瀬の龍口寺へお詣りして、ついでに江の島を見物するはずだったけれど、待っていても、大久保の奥様の病気がよくならないし、そこへ紙魚亭主人が出府してきたので、急に三人で、雑司ヶ谷のおせい様の家にいるお高を訪れることになったのだ。

陽ざかりの庭に、松の影が人かげのように見えていた。芝が、南蛮の敷き物のように青く、そこここに置いてある石は、かわいて白かった。座敷の縁に、庭から来て腰かけて、歌子は、そばに立っている紙魚亭主人と話していた。歌子は、いつもの簡粗な着物を着て、陽やけのした顔を仰向かせて笑っていた。紙魚亭は、松葉をくわえてしきりにかみながら、歌子を見おろしていた。

歌子がいっていた。歌子は若松屋惣七のことをあに様と呼んでいた。

「あに様は、あのお高さんという人を想っているのでございます。でも、むりもございませんよねえ。お高さんはあんなにきれいな、気だてのいい人で、かわいそうな目にあいなすったのですものねえ。