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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

ときどきこわあい眼をするようだが――」

考えていたって始まらない。

まあ、いいさね。

そのうちにはわかるだろうよ。

ひとり者の乱雑さは、いつも女性を親しい心持ちに微笑させるものだ。

姐さんかぶりに女房々々した女、やがてかいがいしくばたばたそこらの掃除をはじめた。

「まあ、たいそうなほこりだこと!」

押入れをあけると洗濯物の山。

「ほほほほ、よくもこうためたものだねえ」

べったりすわってくすくす笑っているうちに、女はふっとさびしくなった。これが、思う殿御との新世帯なら――。

三輪あたりに住まいして、わたしは内で針仕事。

丸髷姿の自分を描いて、女は小娘のように、ぽうっと頬をあからめた。

壁に三味線がかかっている。久しぶりの爪びき。

「恋すちょう身は浮舟のやる瀬なさ、世を宇治川の網代木や、水にまかせているわいな」

夢みるような瞳、横ずわりの膝をくずして、女は、いつまでもうっとりとひいていた。

すべての憂さが忍び音の唄と糸とに溶けて行く。

女の頬に、涙の糸が白く光っていた。

そうしたまま、夕風の立つのも知らずにいた。

突然、戸外にあわただしい跫音がして、がらりと格子があいた。