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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁
それよりも、互いにはじめて見る顔の中には、子は父を、姉は弟を発見して、どんな人間の悲喜が交錯することであろうか? 仇敵同士もいよう。別れた恋人も潜んでいるやもしれぬ。めいめいに秘めためいめいの半生、それが何であろうと、この井底の大部屋では、いっさいが黒である。一色の黒である。
互いに識らぬ三百の黒法師のむれ。
このなかに誰がいることか――それはわからないが、ただ、二人の人間が紛れこんでいることは確かだ。
人魚のお蔦と手枕舎里好。
が、それも今では、同じ装りの多人数に呑まれて、二人は離れ離れになっている。
姿見の井戸――これはそもそも何であろう? どうして人々はここへ集まってくるのか? いかにして井戸の底へはいりこむのか? 制服のような黒い袋はいったいどこから来るのか? 何のための宿泊か? 集合か?
これが、ここへ来て数日、お蔦のこころをとらえた疑問であった。と、そのすべてが自ずと解かれる期が来た。
白衣――それは白い袋の謎である。
誰が誰やらわからない
それこそ烏羽玉の夜だった。
人魚のお蔦が手枕舎里好に伴われて、三味線堀の家を出てから、黙って里好について行くと、里好はあれから、神田明神下へ出て、深夜の妻恋坂を上って行った。