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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

お高は、大声をあげて泣きたかった。大声をあげて笑いたかった。両方だった。

が、何となく面はゆくて、いつもの内玄関からははいれなかった。で、裏へまわった。ひっそりしていた。佐吉や国平も滝蔵も、そこらに姿を見せないのだ。御飯でもいただいているのかしら。お高は、そう思った。もしそうだったら、下男部屋の前を通るときに、そっと三人に、旦那様のごきげんをきいてから奥へ通ったほうがいいと思った。

けさあんなことがあって、じぶんは磯五につれられて出て行ったのだから、どんなに気もちをわるくしていらっしゃるかもしれない。きっといつもの倍も三倍もむりをいって、わたしをいじめなさるに相違ないのだ――お高は、早くそういう惣七を見て、思いきりむりをいわれてみたい気がした。いじめられてみたいと思った。

なみだが、お高の眼をくもらせて、足もとを見えなくした。お高は、台所へ上がるまえに、立ちどまって眼をふいた。

わざといきおいよく上がって行った。

「滝蔵さん、佐吉さん、国平さん、ただいま帰りましたよ」

どこからも返事がなかった。どうしたのだろう。三人ともどこへ行ったのだろうと思いながら、台所につづいた下男部屋の前を通りかかった。