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じょうしき
常識
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《常識(じょうしき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,237 字 · 33 頁
」いつのまに階段を上ってきたか、お幾が、畳とすれすれに顔だけ覗き出していた。「お電話ですよ。富永さんから……。」
はっと、飛礫を投げられたようなもので、息をつめてから、岡部はいきなり立上って、お幾の横をすりぬけながら慌てて降りていった。
坪井がむっくり起上ったのへ、島村はにやにや笑かけた。
「あいつ、でたらめばかり云ってやがる。彫刻のことなんかもちだして……。」
坪井の眼がじっと見つめていた。
「初めの一鑿から像が生きてるなんて、それは商売人の云うことだ、芸術はそんなものじゃない。これでもかこれでもか……という苦心のうちに、或る瞬間、ほんのりと肉体が眼醒めてくるんだ。そこにぶっつかればもうしめたものだが、どうかすると、しまいまで、そうした瞬間を探りあてられないことがある。」
坪井がやはり黙っているので、島村は興ざめた顔で、杯をとりあげた。酒はつめたくなっていた。島村は手をたたいた。やがて、みよ子が上ってきて、用もきかないうちに云った。
「ちょっと、来て下さいって……。」
視線は坪井に向いていた。坪井が立っていくと、島村は銚子をたのんだが、何かしら腑におちない眼付を、村尾と二人で見合したのだった。