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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

線上閱讀高村 光雲《幕末維新懐古談(ばくまついしんかいこだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,975 字 · 10 頁

青空文庫

互いに話は尽きませんのでした。

「高村さん。私は随分前からあなたを知っていますよ。この宅へ、お出でになってからのお顔馴染ではないんですよ。北元町にお出での時から知っていますよ」

光明氏は静かに話す。

「それはまたどういう訳ですね」

「あなたは、北元町の東雲師匠のお店にお出での時分、西行を彫っていたことがありましょう」

「ええ、あります。それを知っているのですか」

「私は、毎朝、毎晩、楽しみにして、あなたの仕事を店先から覗いて行ったものですよ。確か西行は一週間位掛かりましたね」

「そうですそうです。ちょうど七日目に彫り上げました。どうしてまたそんなことを詳しく知ってお出でなのですか」

「それはこういう訳です。私の宅はその頃下谷の松山町にありましたので、其所から日本橋の馬喰町の越中屋という木地商(象牙の)の家へ仕事に毎日行くんでしてね。その往復毎日北元町を通るんで、つい、職業柄、お仕事の容子を覗いて見たような訳なんで……」

光明氏はちゃんと何もかも知っている。なるほど、名人になる人は、平生の心掛けがまた別なものだ。職業柄とはいいながら、他人の仕事をもかく細かに注目し、朝夕立ち寄って見ては、それを楽しく感じたとは、熱心のほども推察される。