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へいぼん
平凡・私は懐疑派だ
二葉亭 四迷
線上閱讀二葉亭 四迷《平凡・私は懐疑派だ(へいぼん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 81,548 字 · 161 頁
気を張て油断をしなかったから、一生人に後指を差されるような過失はなかった代り、余り人に愛しもされずに年を取って了って、父の代となった。
父は祖母とは全で違っていた。如何して此人の腹に此様な人がと怪しまれる程の好人物で、面も薩張り似ていなかった。大きな、笑うと目元に小皺の寄る、豊頬した如何にも愛嬌のある円顔で、形も大柄だったが、何処か円味が有り、心も其通り角が無かった。快活で、蟠りがなくて、話が好きで、碁が好きで、暇さえ有れば近所を打ち歩き、大きな嚏を自慢にする程の罪のない人だった。祖父が矢張然うであったと云うから、大方其気象を受継いだのであろう。
父は此様な人だし、母は――私の子供の時分の母は、手拭を姉様冠りにして襷掛けで能くクレクレ働く人だった。其頃の事を誰に聞いても、皆阿母さんは能く辛抱なすったとばかりで、其他に何も言わぬから、私の記憶に残る其時分の母は、何時迄経っても矢張り手拭を姉様冠りにして、襷掛けで能くクレクレ働く人で、格別如何いう人という事もない。
斯ういう家庭だったから、自然祖母が一家の実権を握っていた。家内中の事一から十迄祖母の方寸に捌かれて、母は下女か何ぞの様に逐使われる。