輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

まぼろしのかなた

幻の彼方

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《幻の彼方(まぼろしのかなた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,763 字 · 84 頁

青空文庫

彼女は病室にはいって、程よい辺へ坐り、低く頭を下げて云った。

「不束者でございますけれど……。」

その挨拶を順造は、自分に対する先刻の挨拶よりは、遙かに立派であると思った。

「お頼みしますよ。」と秋子は云っていた。「私はこんなですけれど、あなたが坊やの面倒を見て下されば、ほんとに安心します。」

順造は席を立って、茶の間の方へ行き、次に庭へ出た。何だか気持が落着かなかった。看護婦が来た時とは全く別な感じ――家の中に女性が一人殖えたという感じが、妙に気にかかった。

然しその感じは、やがて何処かへ飛び去ってしまった。秋子の容態が次第に険悪になっていった。

熱が九度以下にさがって、脈搏が百十五にも及んだ。始終嘔気があって、僅かな流動食も喉に通り難かった。そのくせ、いつも喉が渇いていて、盛んに番茶の熱いのをほしがった。煮立って間もない熱いやつを、平気で飲み下した。腹痛が長く続いて、泣くような唸り声を立てた。痛みが去ると、ぐったりしながらも、手足がだるくて堪らないと訴えた。前腕と足の腓腸部とを、始終さすってやらなければならなかった。そしては昼となく夜となく、頭と心臓部とに氷嚢をあて、腹部に温湿布をし、足先に湯たんぽを入れて、うとうとしていた。