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げんじゅつてんまたろう
幻術天魔太郎
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《幻術天魔太郎(げんじゅつてんまたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 45,616 字 · 90 頁
それから二、三日たつと、お筆とお兼を丹沢山の山塞におくってやり、天魔太郎はあらためて妹の月子、泉田筑後の娘お千代、小僧の虎吉、野州の熊五郎をあつめて、これからさきの活動のことを相談しました。
「父上、駿河大納言忠長卿のこころざしをついで、将軍家光に思いしらせるためには、八重の守りをうちやぶり、千代田の奥に忍びこんで、本懐をとげるまでに、心外道人の教えにしたがって、百人のひとを助けて徳をつまなければならぬ」
「――――」
それはしずかな夏の夜でした。八畳敷をピタリとしめきって、天魔太郎は声をひそめます。
「百人のひとを助けるといっても、はじを知らない非道の悪人を助けてはなんにもならない。さいわい父うえ駿河大納言のけらいで、将軍家光ににくまれはばかられ、伝馬町で永牢をおおせつけられたとらわれの者や、徳川に弓ひいて、ひとしれず土の牢屋にいれられている者の数もすくなくはなく、そのうえ、大阪城の残党や、天草のキリシタン宗徒で、いのちのつづくかぎり、逃げまわっている者もずいぶんあることだろう」
「――――」
「その徳川にそむいた人々をかたっぱしからすくいだせば、百人にも二百人にものぼることだろうが、おれはその仕事をはじめる前に、もっと痛快で、もっともっと胸のすく仕事を考えているのだよ」