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げんじゅつてんまたろう
幻術天魔太郎
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《幻術天魔太郎(げんじゅつてんまたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 45,616 字 · 90 頁
あったわけでもありません。
でも、人間はまことにがんこで強情で、負けずぎらいをねりかためたようなおやじでした。あんまりしゃくにさわるから、天魔太郎の幻術でキリキリまいをさせられたことなどは、もとよりおくびにも出しません。
世間がなんにも知らずにいると、つぎのおはちはとうじ老中第一の利口もの、さくねん島原の乱を平定して武勇のほまれ日本じゅうになりひびいたばかりでなく、後年由井正雪一味のむほんのくわだてまで見やぶって、智恵伊豆という異名をとった――参州吉田の城主七万石、松平伊豆守信綱の方へとまわっていったのです。
それは五月になったばかりのある夜、伊豆守信綱は、寝所のなかで、天下の政治のことなどを、あれや、これやと考えておりました。青だたみが目にしみるようで、絹の吊夜具がフンワリとからだをつつむ中に、伊豆守は目をつぶって、しずかに思いをこらしております。
「お、おや?」
にわかに雨が降ってきたようすです。さっきまで星の降るような、うつくしい夜だったが、と、思いながら目をひらくと、有明の絹あんどんがスーツと暗くなって、ひさしをたたく雨の音がますますはげしく、それがやがて、数千万挺の鉄砲をうちこむような、おそろしい音になります。