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おさなきころのおもいで
幼き頃の想い出
上村 松園
線上閱讀上村 松園《幼き頃の想い出(おさなきころのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,182 字 · 5 頁
明治二十年過ぎのことでございますから、その菊安の店に並べられて居る古本類には徳川時代の版刻物、絵本や読本の類が数多く占めて居ました。
そうした版刻物の中には、曲亭馬琴の小説類が殊に多うございました。たとえば水滸伝だとか、八犬伝だとか、弓張月だとか、美少年録だとか、馬琴のものならほとんど総べて揃って居たように記憶します。そうしてその※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)絵には殊に葛飾北斎のものが多く、その他当時の浮世絵師の※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)絵が豊かにまれて居ました。
私の母は非常に絵画趣味や、文学趣味に富んで居て、その血が私に遺伝したわけでございますが、何しろ菊安が家の近くだったものでございますから、母は屡※(二の字点、1-2-22)その菊安へ駆けつけて、そうした馬琴の読本やいろんな絵本を一束ずつ買って来たものでございます。そうして母子してその読本を翻しながら、絵を眺めることに非常な享楽を得たものでございます。殊に私はそれ等の版画をその儘、手当り次第に模写するのが、子供心の非常な感興でもありましたし、それが少女時代の重要な生活の一つになり、離すことの出来ない習慣性にもなりました。