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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
線上閱讀堀 辰雄《幼年時代・晩夏(ようねんじだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,965 字 · 169 頁
浜之助はすぐ役所から飛んできた。それが小梅のおばさんの家に浜之助のきた最初であり、また最後であった。夕方、ようやく薫さんの癪もおさまり、浜之助が連れもどることになって、皆して水戸さまの前まで送っていった。そして土手のうえで、母と私とは、薫さんを伴った父と分かれた。
なんでも私はたいへん智慧づくのが遅くって、三つぐらいになってもまだ「うま、うま……」ということしか言えなかったのに、その夕方、おばさんの家で父に逢うと、私はとてもよろこんでしまって、そのとき生れてはじめて「お父うちゃん……お父うちゃん……」と言えるようになった。よっぽどそんなところで思いがけず父に逢えたのがうれしかったものと見える。しかし、それが私のその父に逢うことの出来た最後であったそうだ。
それからまもなく、その父浜之助は、脳をわずらって、もう再び世に立たない人となってしまったのである。
私の母は、それまで弟たちのところにいたおばあさんに来てもらって、土手下の、水戸さまの裏に小さなたばこやの店をひらいた。
いままで私たちのいた麹町の堀の家は、立派な門構えの、玄関先きに飛石などの打ってあるような屋敷だった。