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『こうじえん』じじょ

『広辞苑』自序

新村 出

線上閱讀新村 出《『広辞苑』自序(『こうじえん』じじょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,278 字 · 7 頁

青空文庫

とりわけ、上田・松井両博士の『大日本国語辞典』と、大槻博士の『大言海』とに関しては、身親しくその編集室に見学した縁故もあったのみか、殊に後者の校訂には深く参与し、前者の再刊に際しては僅少ながら接触したゆかりもあって、自分のためにも、何かと参考に資せられて幸福であった。その後も、かれこれ二つばかりの辞典の編集に参画はしたものの、元より綜合統理の任に当った次第ではなかった。それに反して、自分の仕事は、主として語原や語史、語誌や語釈の、主として分解的な、しかし根本的本質的な方面の考究に専念し、綜合的方面の事業に意を致し力を注ぐまでには至らなかった。それは、自分自身の研究が、当初は音韻および文字に、やや進んでからは漸次語法や語義に及び、後年には段々と語誌に向って来たのであって、要は分解を主とし、綜合にうとかった。

今から二十年前、私の辞典の処女作が出来て、望外の歓迎を受けたが、内心大いに満足し得ず、『言海』の著者が、古く率直にその巻末に録しておいたごとく、そんなに良く出来あがったものは無く、ただ直してゆくばかりだ、と思って、すぐさま改訂の業を起し、或は簡約し、或は増訂し、同時に業を進めて、大戦の末期に入り、改訂版の原稿が災厄に帰した。