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かげをふまれたおんな

影を踏まれた女

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《影を踏まれた女(かげをふまれたおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,608 字 · 23 頁

青空文庫

ことしの夏の暑さは格別で、おせきの夏痩せは著しく眼に立った。日の目を見ないような奥の間にばかり閉じこもっているために、運動不足、それに伴う食欲不振がいよいよかれを疲らせて、さながら生きている幽霊のようになり果てた。わけを知らない人は癆症であろうなどとも噂していた。そのあいだに夏も過ぎ、秋が来て、旧暦では秋の終りという九月になった。行者に教えられた百日目は九月十二日に相当するのであった。

それは初めて知ったわけではない。行者に教えられた時、弥助夫婦はすぐにその日を繰ってみて、それが十三夜の前日に当たることをあらかじめ知っていたのである。おせきが初めて影を踏まれたのは去年の十三夜の前夜で、行者のいう百日目があたかも満一年目の当日であるということが、かれの父母の胸に一種の暗い影を投げた。今度こそはその蝋燭のひかりが何かの不思議を照らし出すのではないかとも危ぶまれて、夫婦は一面に言い知れない不安をいだきながらも、いわゆる怖いもの見たさの好奇心も手伝って、その日の早く来るのを待ちわびていた。

その九月十二日がいよいよ来た。その夜の月は去年と同じように明かるかった。