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やくしゃのいっしょう
役者の一生
折口 信夫
線上閱讀折口 信夫《役者の一生(やくしゃのいっしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,324 字 · 31 頁
こういうところから毒婦・悪婆というものも出て来るのである。切られお富の科白「お家のためなら愛敬すて憎まれ口も利かざあなるまい」というのも、女形としてあるべからざることを演じるのも、忠義のためだから為方がないという断りをする。ここで毒婦をしても、常に女形本来の性質である善人の反省に還っている。
悪婆というと、その文字面は老人のことのようだが、若い女のすることなので、たんかをきったり女白浪になったり、かたりやつつもたせをしたりする。元来上方の花車方、江戸の婆方にある性質で老人のものには違いないが、それが永い間の習慣で語だけ残っても、若い役になったのである。
これは花車がやりてになるのと同様で、やりてとさえ言えば、廓茶屋の引手婆を意味するようになったが、もとは若い女房であったのである。これらの変化も併し、そう古くからあった語ではないだろうとは思う。
男の沢山いる中で、それらの男を翻弄する女が出て来て、これが毒婦・悪婆の訣だが、そうは謂っても毒婦・悪婆の範囲は広いのである。例えば、源之助がよく演じた「鬼神のお松」(初演明治二十六年)の様な英雄型の女も毒婦・悪婆だが、又「蟒およし」