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やくしゃのかお
役者の顔
木村 荘八
線上閱讀木村 荘八《役者の顔(やくしゃのかお)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,070 字 · 10 頁
その他、近頃になって頓に、「宗十郎歌舞伎」などという存在の事々しく評家に取り上げられるのも、「顔」で云えばその宗十郎式マスクが少なくなったので、俄かにこと惜しまれる現象と考えられないことはない。偶々梅玉が東へ来ると、その玉手御前の※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)たけて色めいた「顔」は、それを人が初めて見たように、絶讃を浴びせました。
と云うのが、これを逆に云えば、羽左衛門、梅幸、松助、中車、源之助……達の揃っていた頃には、今月見なければ、来月狂言で珍しくもなく見られたわけで、ことさら珍重もしなかった、われわれの歌舞伎マスクが、順に一つ減り、二つ減りして、私の記憶で云えば、最後に橘屋が六段目の勘平を一幕出すという噂がありました。戦争のいつ頃でしたろうか。あの頃には、これは見ておかないとやがて「後悔する」と私など相当はっきりとそう考えたものです。
この旧梨園の引出物は噂だけで、当時事実とならずにしまい、剰さえ、橘屋その人が、やがて「橘屋」に似気ない山の中の温泉場で、亡くなって了ったのでした。
あの頃はしかし日本中メチャメチャの時でしたから、よしや重宝の橘屋の顔、橘屋の足が、視界から消滅しようとも、人はリュック・サック一つ落した程にも思わなかったかもしれません。