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かれ
彼
線上閱讀芥川 竜之介《彼(かれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,980 字 · 11 頁
僕は黒い枠のついた一枚の葉書を眺めた時、悲しさよりもむしろはかなさを感じた。
「なおまた故人の所持したる書籍は遺骸と共に焼き棄て候えども、万一貴下より御貸与の書籍もその中にまじり居り候節は不悪御赦し下され度候。」
これはその葉書の隅に肉筆で書いてある文句だった。僕はこう云う文句を読み、何冊かの本が焔になって立ち昇る有様を想像した。勿論それ等の本の中にはいつか僕が彼に貸したジァン・クリストフの第一巻もまじっているのに違いなかった。この事実は当時の感傷的な僕には妙に象徴らしい気のするものだった。
それから五六日たった後、僕は偶然落ち合ったKと彼のことを話し合った。Kは不相変冷然としていたのみならず、巻煙草を銜えたまま、こんなことを僕に尋ねたりした。
「Xは女を知っていたかしら?」
「さあ、どうだか……」
Kは僕を疑うようにじっと僕の顔を眺めていた。
「まあ、それはどうでも好い。……しかしXが死んで見ると、何か君は勝利者らしい心もちも起って来はしないか?」
僕はちょっと逡巡した。するとKは打ち切るように彼自身の問に返事をした。
「少くとも僕はそんな気がするね。」