輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

かれはむかしのかれならず

彼は昔の彼ならず

太宰 治

線上閱讀太宰 治《彼は昔の彼ならず(かれはむかしのかれならず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,274 字 · 57 頁

青空文庫

金があったらねえ。」

「どうしたのです。へんに搦みつくじゃないか。」

僕は膝をくずして、わざと庭を眺めた。いちいちとり合っていても仕様がないと思ったのである。

「百日紅がまだ咲いていますでしょう? いやな花だなあ。もう三月は咲いていますよ。散りたくても散れぬなんて、気のきかない樹だよ。」

僕は聞えぬふりして卓のしたの団扇をとりあげ、ばさばさ使いはじめた。

「あなた。私はまたひとりものですよ。」

僕は振りかえった。青扇はビイルをひとりでついで、ひとりで呑んでいた。

「まえから聞こうと思っていたのですが、どうしたのだろう。あなたは莫迦に浮気じゃないか。」

「いいえ。みんな逃げてしまうのです。どう仕様もないさ。」

「しぼるからじゃないかな。いつかそんな話をしていましたね。失礼だが、あなたは女の金で暮していたのでしょう?」

「あれは嘘です。」彼は卓のしたのニッケルの煙草入から煙草を一本つまみだし、おちついて吸いはじめた。「ほんとうは私の田舎からの仕送りがあるのです。いいえ。私は女房をときどきかえるのがほんとうだと思うね。あなた。箪笥から鏡台まで、みんな私のものです。女房は着のみ着のままで私のうちへ来て、それからまたそのままいつでも帰って行けるのです。