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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《思い出す事など(おもいだすことなど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 頁

青空文庫

廊下のすぐ下をちょろちょろと流れる水の音にも佇ずんだ。かくわが身を繞る多くのものに徊しつつ、予定の通り二週間の過ぎ去るのを待った。

その二週間は待ち遠いはがゆさもなく、またあっけない不足もなく普通の二週間のごとくに来て、尋常の二週間のごとくに去った。そうして雨の濛々と降る暁を最後の記念として与えた。暗い空を透かして、余は雨かと聞いたら、人は雨だと答えた。

人は余を運搬する目的をもって、一種妙なものを拵らえて、それを座敷の中に舁き入れた。長さは六尺もあったろう、幅はわずか二尺に足らないくらい狭かった。その一部は畳を離れて一尺ほどの高さまで上に反り返るように工夫してあった。そうして全部を白い布で捲いた。余は抱かれて、この高く反った前方に背を託して、平たい方に足を長く横たえた時、これは葬式だなと思った。生きたものに葬式と云う言葉は穏当でないが、この白い布で包んだ寝台とも寝棺とも片のつかないものの上に横になった人は、生きながら葬われるとしか余には受け取れなかった。余は口の中で、第二の葬式と云う言葉をしきりに繰り返した。人の一度は必ずやって貰う葬式を、余だけはどうしても二返執行しなければすまないと思ったからである。