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おもいだすことなど
思い出す事など
線上閱讀夏目 漱石《思い出す事など(おもいだすことなど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 頁
したがって「思い出す事など」の中に詩や俳句を挟むのは、単に詩人俳人としての余の立場を見て貰うつもりではない。実を云うとその善悪などはむしろどうでも好いとまで思っている。ただ当時の余はかくのごとき情調に支配されて生きていたという消息が、一瞥の迅きうちに、読者の胸に伝われば満足なのである。
秋の江に打ち込む杭の響かな
これは生き返ってから約十日ばかりしてふとできた句である。澄み渡る秋の空、広き江、遠くよりする杭の響、この三つの事相に相応したような情調が当時絶えずわが微かなる頭の中を徂徠した事はいまだに覚えている。
秋の空浅黄に澄めり杉に斧
これも同じ心の耽りを他の言葉で云い現したものである。
別るるや夢一筋の天の川
何という意味かその時も知らず、今でも分らないが、あるいは仄に東洋城と別れる折の連想が夢のような頭の中に這回って、恍惚とでき上ったものではないかと思う。
当時の余は西洋の語にほとんど見当らぬ風流と云う趣をのみ愛していた。その風流のうちでもここに挙げた句に現れるような一種の趣だけをとくに愛していた。
秋風や唐紅の咽喉仏
という句はむしろ実況であるが、何だか殺気があって含蓄が足りなくて、口に浮かんだ時からすでに変な心持がした。