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おんりょうしゃくよう

怨霊借用

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《怨霊借用(おんりょうしゃくよう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,803 字 · 38 頁

青空文庫

揃って、むら兀の白粉が上気して、日向で、むらむらと手足を動かす形は、菜畠であからさまに狐が踊った。チャンチキ、チャンチキ、田舎の小春の長閑さよ。

客は一統、女中たち男衆まで、挙って式台に立ったのが、左右に分れて、妙に隅を取って、吹溜りのように重り合う。真中へ拭込んだ大廊下が通って、奥に、霞へ架けた反橋が庭のもみじに燃えた。池の水の青く澄んだのに、葉ざしの日加減で、薄藍に、朧の銀に、青い金に、鯉の影が悠然と浮いて泳いで、見ぶつに交った。ひとりお桂さんの姿を、肩を、褄を、帯腰を、彩ったものであった。

この夫婦は――新婚旅行の意味でなく――四五年来、久しぶりに――一昨日温泉へ着いたばかりだが、既に一週間も以前から、今日の祝日の次第、献立書が、処々、紅の二重圏点つきの比羅になって、辻々、塀、大寺の門、橋の欄干に顕われて、芸妓の屋台囃子とともに、最も注意を引いたのは、仮装行列の催であった。有志と、二重圏点、かさねて、飛入勝手次第として、祝賀委員が、審議の上、その仮装の優秀なるものには、三等まで賞金美景を呈すとしたのに、読者も更めて御注意を願いたい。

だから、踊屋台の引いて帰る囃子の音に誘われて、お桂が欣七郎とともに町に出た時は、橋の上で弁慶に出会い、豆府屋から出る緋縅の武者を見た。