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おんりょうしゃくよう

怨霊借用

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《怨霊借用(おんりょうしゃくよう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,803 字 · 38 頁

青空文庫

「可厭な、あいかわらずね……」

お桂さんが引返そうとした時、歩手前の店のは、白張の暖簾のような汚れた天蓋から、捌髪の垂れ下った中に、藍色の片頬に、薄目を開けて、片目で、置据えの囃子屋台を覗くように見ていたし、先隣なのは、釣上げた古行燈の破から、穴へ入ろうとする蝮の尾のように、かもじの尖ばかりが、ぶらぶらと下っていた。

帰りがけには、武蔵坊も、緋縅も、雁がねも、一所に床屋の店に見た。が、雁がねの臆面なく白粉を塗りつつ居たのは言うまでもなかろう。

――小一按摩のちびな形が、現に、夜泣松の枝の下へ、仮装の一個として顕れている――

按摩の謙斎が、療治しつつ欣七郎に話したのは――その夜、食後の事なのであった。

三

「半助さん、半助さん。」

すらすらと、井菊の広い帳場の障子へ、姿を見せたのはお桂さんである。

あの奥の、花の座敷から来た途中は――この家での北国だという――雪の廊下を通った事は言うまでもない。

カチリ……

ハッと手を挙げて、珊瑚の六分珠をおさえながら、思わず膠についたように、足首からむずむずして、爪立ったなり小褄を取って上げたのは、謙斎の話の舌とともに、蛞蝓のあとを踏んだからで、スリッパを脱ぎ放しに釘でつけて、身ぶるいをして衝と抜いた。