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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

線上閱讀小酒井 不木《怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集(みっつのあざ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 頁

青空文庫

「え?」

「これです」と、いって警部はテーブルの抽斗から二本の毛髪を取り出した。「あなたのこの毛が死体のそばに落ちて居ました」

「まあ、どうしてでしょう?」と彼女は驚いて言った。「けれど、大原さんのお宅へは行きませんでした」

警部の眼はその瞬間鋭く輝いた。

「あなたは大原さんの店へ来られる前に、何処に居ましたか?」

「大阪です」

「御両親は?」

「母が一人先達まで生きて居ましたが、死んでからすぐ私は上京しました」

「誰の紹介で大原さんの店へはいりました」

「新聞広告を見て直接お目にかかりに行って雇ってもらいました」

「大原さんのお宅へは昨夜初めてお行きになっただけですね?」

「ええ、いえ、まだ一度も行ったことがありません」

「よろしい。あとでもう少しおたずねしたいことがありますから、あちらで待って居て下さい」

せい子はホッとしたらしく、手巾で顔を拭いながら出て行った。霧原警部は、すぐさま水野刑事を呼んで、銀座の星村薬局へ行って、大原が昨晩どんな薬を買いにはいったか、取調べて来るよう命じた。

間もなく細工師の谷村が連れられて来た。彼は洋服を着た三十ばかりのすらりとした男であるが、その顔は非常に蒼ざめていた。