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かいいくろひめおろし

怪異黒姫おろし

江見 水蔭

線上閱讀江見 水蔭《怪異黒姫おろし(かいいくろひめおろし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,963 字 · 26 頁

青空文庫

「あッ、もう、どうしようのう」

思わず知らず、口走った。大名の権威も、女子の謹慎も、共に忘れて了ったのであった。

「誰そ、早う……あ……もう、絶入るばかりじゃ。誰そ来てたもれ」

常ならば次の間の笹尾が真先に起きて来るものを、疲れ切ってか、眠りから覚めなかった。宿直の侍女もどうしたのか、二人ともそれを聴かぬらしい。こっちへ来ようとはしなかった。

「誰そ、誰そ」

高田殿の悩みの声。

「はッ、何御用に御座りまするか」

絹張の丸行燈の下に、両手を突いて頭を下げた少女を、高田殿は蚊帳越しに見た。それはどうやら給仕に出た本陣の娘らしく思われたのであった。

「おう、能う来てくれやった。さッ、早う。その方でも苦しゅうない。ここへ来て、毒虫に螫された後の、手当をしてくれやいのう」

八

関川の滝之助は急に大富限者と成ったけれど、直ぐその金持面をする時は、人から疑われるを知っていた。

江戸へ出て、とも考えたが、三十六貫目の黄金を、どうして運んで好い事か、それにも迷わずにはいられなかった。

身体はいくら大きくても、未だ十四歳。死んだ洞斎老人の遺言通り、徳川の家に仇するには、余りに準備が足りなかった。