輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

きょうふおう

恐怖王

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《恐怖王(きょうふおう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 頁

青空文庫

さっきわたしが見廻った時と少しも変ったことはありません」

夫人はホッと安堵の溜息をつく。

蘭堂は不躾にも、薄絹に顔をくッつける様にして、京子の寝顔を覗き込んでいたが、やがて、何に気附いたのか、ただならぬ様子で夫人の腕を捉えた。

「奥さん、ごらんなさい。京子さんの寝顔を。余り静かじゃありませんか。それにあの青さはどうでしょう」

「エ、何とおっしゃいます」

夫人はギョッとして、蘭堂を見つめた。

「奥さん、念の為に、京子さんを起して見て下さい。何だか変です」

夫人は云われるまでもなく、薄絹をまくって、寝台に近づき、白い毛布の上から京子の身体をソッと揺り動かした。

「京子さん、京子さん」

併し返事はない。

夫人は慌しく、毛布の下の娘の左手を探し求めて、それを握った。冷い、まるで氷の様だ。

「京子さん、どうしたのです。コレ、京子さん」

夫人はもう半狂乱の体で、握った手を強く引いた。

と、実に恐ろしいことが起った。

夫人は大きな音を立てて尻餅をついたのだ。京子の左手を握ったまま。非常に滑稽な図であった。それ故に一層物凄く恐ろしかった。

まるで人形の腕がもげる様に、京子の手がスッポリと抜けてしまったのだ。