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うらみなきさつじん
恨なき殺人
宮島 資夫
線上閱讀宮島 資夫《恨なき殺人(うらみなきさつじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 頁
風通しの悪い綿蚊帳の中には、酒臭い息がこもって、鈍い焔の光りが、彼の側に寝ている女の姿をどんよりと照していた。起き上ると汗がダラダラと顔を流れて、頭が石のように重くなっていた。何もかも彼には気持の悪いものばかりであった。彼は急いで蚊帳を出ると、ソッと現場着を着て茶屋を出た。
真夏の朝は白く明けて、涼しい山風が小暗い木蔭から吹いていた。
彼はフト事務所の方を見たが、縁の戸はまだ閉っていた。裏屋根から立ち上る白い煙が裏手の黒い森の中へ流れ込んでいた。池田はその家の中に眠っている人のことを思うと、冷たい笑いが胸に浮んだ。そして何か勝ち誇ったような気になって、現場の方へさっさと歩き出した。
けれども、ものの十足と歩かない中に、彼の頭はうなだれてしまった。それは一つにはまだ醒め切らない酒のために、頭の後ろの方がズキズキと痛んだからであった。然しそれよりも、低能と罵っている人間に反抗するために、酒を飲んで唄を謳って、宿酔で苦しんでいる自分のしたことが、馬鹿らしく思われたからであった。なおそれよりも、今朝自分の傍に寝ていた女のことを思うと、彼は自分に愛想がつきて、何もかも考えるのすらいやになった。