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うらみなきさつじん

恨なき殺人

宮島 資夫

線上閱讀宮島 資夫《恨なき殺人(うらみなきさつじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 頁

青空文庫

その男は一こくらしく問い詰めた。

「何い作法だ、おら餓鬼の時から坑夫になって、今日まで作法を知らねえなんて、ひぼをつけられたこたあねえんだ、うぬが作法を知らねえんだ」

「よし、お前がそう言うなら、俺もこんだ高田の坑内を黙って歩いてやるからそう思え」

「なにをっ、うぬらの雁首で歩けるものなら歩いてみろっ」と萩野は又一歩踏み出した。

「何っ」と先きの男の天秤を持った手が、ピクッと震えた。面白半分に二人の口論を聞いていた池田は其の時中に入った。

「よせっ、おい萩野君、こんな事で仲間と喧嘩して何になるんだ、止せよ」と萩野をとめてから、先きの男に、

「君、今日は僕がこの山を見に来るって出て来たんだから、此処で喧嘩をされると僕が済まないことになる、まあ一寸したことの行き違いだから勘弁してくれ給え」と頭を下げた。

「なにお前さん、同職の癖に小山だと思って馬鹿にしやがるから癪にさわるんだ」

その男はまだ萩野を睨めていた。

「なにっ」と萩野がまた出ようとするのを、

「好いから行こうよ、喧嘩するほどのことじゃないさ」と池田は萩野を無理に引っ張って、山を下った。

三田は黙って後からつづいた。