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きょうぞうのちち

恭三の父

加能 作次郎

線上閱讀加能 作次郎《恭三の父(きょうぞうのちち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,742 字 · 20 頁

青空文庫

」

「へえい……。」

急に張合が抜けて、恭三はぼんやり広間に立って居た。一寸間を置いて、

「家へ来たんですか。」

「おう。」

「何処から?」

「本家の八重さのとこからと、清左衛門の弟様の所から。」と弟が引き取って答えた。

「一寸読んで見て呉れ、別に用事はないのやろうけれど。」と父がやさしく言った。

「浅七、お前読まなんだのかい。」

恭三は不平そうに言った。

「うむ、何も読まん。」

「何をヘザモザ言うのやい。浅七が見たのなら、何もお前に読んで呉れと言わんない※(感嘆符二つ、1-8-75) あっさり読めば宜いのじゃないか。」

父親の調子は荒かった。

恭三はハッとした。意外なことになったと思った。が妙な行きがかりで其儘あっさり読む気にはなれなかった。それで、

「何処にありますか。」と大抵其在所が分って居たが殊更に尋ねた。

父は答えなかった。

「炉縁の上に置いてあるわいの。浅七が蚊帳に入ってから来たもんじゃさかい、読まなんだのやわいの。邪魔でも一寸読んで呉んさい。」と母は優しく言った。

恭三は洋灯を明るくして台所へ行った。炉縁の角の所に端書と手紙とが載って居た。恭三は立膝のまゝでそれを手に取った。