輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
あくむ
悪夢
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《悪夢(あくむ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,930 字 · 32 頁
それからそれへと思い出に耽ってるうちに、私の頭の中にはいつしか、二つの小さなものがぽつりと据えられていた。何もかも遠くぼんやりとしてる中に、その二つだけが、如何にも小さくはあるが、如何にもはっきり浮び出していた。その一つは、広い自然の中に埋もれて、額の汗で自分の食物を育て上げてる、兄の小さな姿だった。他の一つは、自然の中から根こぎにされて、都会の人波の中に溺れながら齷齪してる、自分自身の小さな姿だった。そして私は、久しぶりで人間らしいしみじみとした気持になって、兄へ手紙を書き初めた。
所が、その手紙がどうしても出来上らなかった。一通り時候の挨拶や無沙汰の詫びなどをして、さてその次に書くべき事柄が見当らなかった。近頃の様子を知らしてくれと兄は云ってるが、何を今改まって知らせるべきことがあったろうか? 朝起きてから夜眠るまでの、毎日同じような生活をか? いやそんなことは兄が既によく知ってる事柄である。何にも変ったことはないと云えばそれまでだけれど、田舎の生活と違って都会の生活では、変らないということは文字通りに無変化を意味する。それが兄に分るものか。