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あくじゅうへん
悪獣篇
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《悪獣篇(あくじゅうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,715 字 · 73 頁
」
赤目の嫗は自から深く打頷いた。
十二
時に色の青い銀の目の嫗は、対手の頤につれて、片がりながら、さそわれたように頷いたが、肩を曲げたなり手を腰に組んだまま、足をやや横ざまに左へ向けた。
「帰途のほどは宵月じゃ、ちらりとしたらお姿を見はずすまいぞや。かぶりものの中、気をつけさっしゃれ。お方くらい、美しい、紅のついた唇は少ないとの。薄化粧に変りはのうても、膚の白いがその人じゃ、浜方じゃで紛れはないぞの、可いか、お婆さん、そんなら私は行くわいの。」
「茶一つ参らぬか、まあ可いで。」
「預けましょ。」
「これは麁末なや。」
「お雑作でござりました。」
と斉しく前へ傾きながら、腰に手を据えて、てくてくと片足ずつ、右を左へ、左を右へ、一ツずつ蹈んで五足六足。
「ああ、これな、これな。」
と廂の夕日に手を上げて、たそがれかかる姿を呼べば、蘆を裾なる背影。
「おい、」とのみ、見も返らず、ハタと留まって、打傾いた、耳をそのまま言を待つ。
「主、今のことをの、坂下の姉さまにも知らしてやらしゃれ、さだめし、あの児も拝みたかろ。」
聞きつけて、件の嫗、ぶるぶると頭を掉った。