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あくじゅうへん

悪獣篇

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《悪獣篇(あくじゅうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,715 字 · 73 頁

青空文庫

て来る、浪に心は置かなかったが、またそうでもない。先刻の荒物屋が背後へ来て、あの、また変な声で、御新姐様や、といいはしまいかと、大抵気を揉んだ事ではない。……

婆さんは幾らも居る、本宅のお針も婆さんなら、自分に伯母が一人、それもお婆さん。第一近い処が、今内に居る、松やの阿母だといって、この間隣村から尋ねて来た、それも年より。なぜあんなに恐ろしかったか、自分にも分らぬくらい。

毛虫は怪しいものではないが、一目見ても総毛立つ。おなじ事で、たとえ不気味だからといって、ちっとも怪しいものではないと、銑さんはいうけれど、あの、黄金色の目、黄な顔、這うように歩行いた工合。ああ、思い出しても悚然とする。

夫人は掻巻の裾に障って、爪尖からまた悚然とした。

けれどもその時、浜辺に一人立っていて、なんだか怪しいものなぞは世にあるものとは思えないような、気丈夫な考えのしたのは、自分が彳んでいた七八間さきの、切立てに二丈ばかり、沖から燃ゆるような紅の日影もさせば、一面には山の緑が月に映って、練絹を裂くような、柔な白浪が、根を一まわり結んじゃ解けて拡がる、大きな高い巌の上に、水色のと、白衣のと、水紅色のと、西洋の婦人が三人。