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あくじゅうへん

悪獣篇

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《悪獣篇(あくじゅうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,715 字 · 73 頁

青空文庫

……

――それが夢か。――

「ま、待って、」

はてな、と夫人は、白き頸を枕に着けて、おくれ毛の音するまで、がッくりと打かたむいたが、身の戦くことなお留まず。

それとも渚の砂に立って、巌の上に、春秋の美しい雲を見るような、三人の婦人の衣を見たのが夢か。海も空も澄み過ぎて、薄靄の風情も妙に余る。

けれども、犬が泳いでいた、月の中なら兎であろうに。

それにしても、また石屋の親方が、水に彳んだ姿が怪しい。

そういえば用が用、仏像を頼みに行くのだから、と巡礼染みたも心嬉しく、浴衣がけで、草履で、二つ目へ出かけたものが、人の背で浪を渡って、船に乗ろうとは思いもかけぬ。

いやいや思いもかけぬといえば、荒物屋の、あの老婆。通りがかりに、ちょいとほんの燐枝を買いに入ったばかりで、あんな、恐ろしい、忌わしい不気味なものを、しかも昼間見ようとは、それこそ夢にも知らなかった。

船はそのためとして見れば、巌の婦人も夢ではない。石屋の親方が自分を背負って、世話をしてくれたのも、銑さんが船を漕いだのも、浪も、鴎も夢ではなくって、やっぱり今のが夢であろう。

――「ああ、恐しい夢を見た。