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あくじゅうへん

悪獣篇

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《悪獣篇(あくじゅうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,715 字 · 73 頁

青空文庫

手を挙げて、二三度続ざまに麾くと、あとの二人もひらひらと、高く手巾を掉るのが見えた。

要こそあれ。

廉平は雲を抱くがごとく上から望んで、見えるか、見えぬか、慌しく領き答えて、直ちに丘の上に踵を回らし、栄螺の形に切崩した、処々足がかりの段のある坂を縫って、ぐるぐると駈けて下り、裾を伝うて、衝と高く、ト一飛低く、草を踏み、岩を渡って、およそ十四五分時を経て、ここぞ、と思う山の根の、波に曝された岩の上。

綱もあり、立樹もあり、大きな畚も、またその畚の口と肩ずれに、船を見れば、苫葺いたり。あの位高かった、丘は近く頭に望んで、崖の青芒も手に届くに、婦人たちの姿はなかった。白帆は早や渚を彼方に、上からは平であったが、胸より高く踞まる、海の中なる巌かげを、明石の浦の朝霧に島がくれ行く風情にして。

かえって別なる船一艘、ものかげに隠れていたろう。はじめてここに見出されたが、一つ目の浜の方へ、半町ばかり浜のなぐれに隔つる処に、箱のような小船を浮べて、九つばかりと、八つばかりの、真黒な男の児。一人はヤッシと艪柄を取って、丸裸の小腰を据え、圧すほどに突伏すよう、引くほどに仰反るよう、ただそこばかり海が動いて、舳を揺り上げ、揺り下すを面白そうに。