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あくまのかお

悪魔の顔

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《悪魔の顔(あくまのかお)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,677 字 · 29 頁

青空文庫

「あ、お嬢様」

偶然取次に出た老執事は、飛上るほどに驚いて、凝然と玄関に立ちすくみます。

「爺やかい、――お父様が亡くなったって本当かえ」

「本当にも何も、お嬢様、その上お妹様が下手人だなんて、そんな間違った話があるものじゃ御座いません」

「え、え? 美保ちゃんがかえ?」

「左様で御座いますよ、お嬢様」

事態容易ならずと見た若い女が、其儘奥へ飛込もうとする前へ、

「何誰です」

ピタリと立ちはだかったのは、今日からは未亡人になった夫人の濤子、亢奮と不眠に少し逆上ては居りますが、此邸を背負って立とうとする強烈な意志が動くせいか、深い歎きのうちにも、何んとなく屹としたところがあります。

「奥様、大きいお嬢様の関子様でいらっしゃいます」

「…………」

老執事の取なし顔な言葉を俟つまでもなく、濤子夫人にこの相手の名がわからない筈はありません。自分の前に立って居るのは、三年前自分が此邸に入り込んで来た時、どうしても自分を母親と呼ぶのがいやだと言って、当もなく飛出してしまった剛情な継子の顔です。

内気で淋しい妹の美保子に比べると、姉の関子は美しさも情の剛さも大変な違いでした。