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あいとにんしきとのしゅっぱつ

愛と認識との出発

倉田 百三

線上閱讀倉田 百三《愛と認識との出発(あいとにんしきとのしゅっぱつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 64,420 字 · 129 頁

青空文庫

時間空間に束縛されたるわれらの小さき胸のなかにも実在の無限なる統一力が潜んでいる。われらは自己の心底において宇宙を構成せる実在の根本を知ることができる。すなわち神の面目を捕捉することができる。ヤコブ・ベーメのいったごとくに「翻されたる目」をもてただちに神を見るのである。かくいえば知的直観なるものははなはだ空想的にして不可思議なる神秘的能力のごとく思われる。あるいはしからずとするも、非凡なる芸術的、哲学的天才のみの与ることを得る超越的認識のごとく思われる。しかしけっしてそうではない。最も自然にして、原始的なるわれらに最も近き認識である。鏡のごとく清らかに、小児のごとく空しき心にただちに映ずる実在の面影である。

知的直観とは純粋経験に於ける統一作用そのものである。生命の捕捉である。即ち技術の骨の如きもの、一層深く言へば美術の精神の如きものである。例へば画家の興来たり、筆自ら動くやうに複雑なる作用の背後に統一的或者が働いてる。その変化は無意識の変化ではない。一者の発展完成である。この一者の会得が知的直覚である。普通の心理学では単に習慣であるとか、有機作用であるとか言ふであらうが、純粋経験の立場より見れば、これ実に主客合一、知意融合の状態である。