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せんわ
戦話
岩野 泡鳴
線上閱讀岩野 泡鳴《戦話(せんわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,520 字 · 21 頁
また敵の砲塁までまだどれほどあるかて、音響測量をやって見たら、たッた二百五十メートルほかなかった。大小の敵弾は矢ッ張り雨の如く降っとった。その間を平気で進んで来たものがあるやないか? たッた独りやに「沈着にせい、沈着にせい」と云うて命令しとる様な様子が何やらおかしい思われた。演習に行てもあないに落ち付いておられん。人並みとは違た様子や。して、倒れとるものが皆自分の命令に従ごて来るつもりらしかった。それが大石軍曹や。」
友人は不思議ではないかと云わぬばかりに、僕と妻君との顔を順ぐりに見た。
「戦場では」と僕が受けて、「大胆に出て行くものにゃア却って弾が当らないものだそうだ。」
「うちの人の様にくよくよしとると、ほんまにあきまへん。」
「そやかさいおれは不大胆の厭世家やて云うとる。弾丸が当ってくれたのはわしとして名誉でもあったろが、くたばりそこねてこないな耻さらしをするんやさかい、矢ッ張り大胆な奴は仕合せにも死ぬのが早い――『沈着にせい、沈着にせい』云うて進んで行くんやさかい、上官を独りほかして置くわけにも行かん。この人が来なんだら、僕は一目散に逃げてしもたやも知れんのや。