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げさくざんまい

戯作三昧

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《戯作三昧(げさくざんまい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,807 字 · 42 頁

青空文庫

二

「どういたしまして、いっこう結構じゃございません。結構と言や、先生、八犬伝はいよいよ出でて、いよいよ奇なり、結構なお出来でございますな。」

細銀杏は肩の手拭を桶の中へ入れながら、一調子張り上げて弁じ出した。

「船虫が瞽婦に身をやつして、小文吾を殺そうとする。それがいったんつかまって拷問されたあげくに、荘介に助けられる。あの段どりが実になんとも申されません。そうしてそれがまた、荘介小文吾再会の機縁になるのでございますからな。不肖じゃございますが、この近江屋平吉も、小間物屋こそいたしておりますが、読本にかけちゃひとかど通のつもりでございます。その手前でさえ、先生の八犬伝には、なんとも批の打ちようがございません。いや全く恐れ入りました。」

馬琴は黙ってまた、足を洗い出した。彼はもちろん彼の著作の愛読者に対しては、昔からそれ相当な好意を持っている。しかしその好意のために、相手の人物に対する評価が、変化するなどということは少しもない。これは聡明な彼にとって、当然すぎるほど当然なことである、が、不思議なことには逆にその評価が彼の好意に影響するということもまたほとんどない。